崔洋一監督トークショー詳細

7月5日(日)川越スカラ座で、5人の日本を代表する監督が作った「The ショートフィルムズ/はじめはみんなコドモだった」の上映を記念して、5人の監督のお一人である崔洋一監督のトークショーが行われました。

崔監督トークショー

崔洋一監督は「月はどっちに出ている」で日本の映画賞を総なめにし、盲導犬クイールを描いた「クイール」、ビートたけし主演でリアルな描写が話題となった「血と骨」など様々なジャンルの映画を撮っておられます。

崔監督現在は日本映画監督協会理事長をされているほどの大物監督、一体どんな方なのだろうとドキドキでした。とても大柄な方で、なおかつ醸し出す雰囲気にも圧倒的な存在感のある方でしたが、その気さくな話し振りや話の面白さに引き込まれて行きました。30分という限られた時間の中で、多くの話題が盛り込まれ、内容の濃いトークショーとなりました。

崔監督「こども」をテーマとした「The ショートフィルムズ/はじめはみんなコドモだった」に集った監督は自己主張の強い方ばかり。重ならないようにと探りを入れながらの製作だったそうです。しかしながら、誰もどんなショートフィルムを作るのか教えてくれない。唯一わかったのは、母と娘を題材にしては誰もやらないということだけ。そこで崔監督は小泉今日子さんの出演を先に決め、子供を持つ親の視点から描くことにしたのだそうです。
崔監督の作品「ダイコン(ダイニングテーブルのコンテンポラリー)」は家族が食卓を囲むダイニングテーブルから始まり、ダイニングテーブルで終わります。そこに「親と子の突き放しつつ切れない関係」「親から見て他者として変質してくる子供」「顔が見えなくても会話が成立する関係」を描きたかったと話されます。坦々とした描写でありながらそれが逆に家族のリアリズムを映し出しています。

最近テレビのニュースでも話題となった北海道旧穂別町の平均年齢70歳をゆうに越えるお年寄りたちが作ったミュージカル映画「田んぼでミュージカル」や「いい爺いライダー」にも話が及びました。崔監督はこれらの映画の指導をされています。

崔監督トークショー65歳以上が人口の1/3以上という高齢過疎の町で、お年寄りの「想像の扉を開くチャンスがますます減る、行政的にも一般的にもお年寄りとして求められている役割を受け入れることで、自分の想像力を終わらせて良いのか」と崔監督は言います。「お年寄りは知恵に長けており情報の使い分けがうまい。(そのお年寄りたちが)人間の持つ潜在的な自己表現をすることで関わった人がどんどん純粋化して来る。」

「(映画を通じての)自己表現を見てもらうことで力が宿り、受け手がいるから自己表現が成り立つということを自然にわかって来る。」そのように話されていました。これはお年寄りに限ったことではなく、どんな世代にも言えることではないでしょうか。自己表現を限定してはいけないと、そして独りよがりではなく、他者との関わりの中で、自己表現は初めて成立するのだと。

崔監督(スカラ座の前で)トークショー終了後、崔監督は「自分の住む場所での情報発信を放棄してはいけない」とした上で、スカラ座について、「地域が自分たちの誇りとして、情報発信の場として守って行かなければならないもので、情報発信を怠らず独自性・固有性を持って取り組んでいることにシンパシーを感じる」と、そして「監督と映画館は運命共同体。映画はその上映を観客が観ることによって観た人に記憶され、それによって初めて完結する」というようなことをおっしゃっていました。
そこにはトークショーで話された自己表現に対する崔監督の一貫した深い考え方があると感じました。自己表現の手段である映画というものに真摯に向きあい、そしてその確立に切り離せない他者とも真剣に向き合っていらっしゃる方なのだと思いました。
とても心に深く入り込む考えさせられるお話でした。そして人間味溢れる崔監督を少し身近に感じられたように思います。

カムイ外伝トークショーの最後には、2009年9月公開の映画「カムイ外伝」についてのお話もありました。本伝のスピンオフ的物語となる「カムイ外伝」、人間としての自由さを求めながらそこに立ちはだかる大きな壁、そこに生じる矛盾などが忍者カムイを通して描かれる大作です。「映画にも作りたいものと求められるものの違いがあるが、この作品は自分にぴったり」と崔監督はおっしゃっていました。主演は今旬の松山ケンイチ、脚本は宮藤官九郎。この秋期待の映画です。

また、「The ショートフィルムズ/はじめはみんなコドモだった」のスカラ座での上映は7月17日(金)までです。

スカラ座のスタッフの方々と記念撮影

一編が20分を切り、肩の力を抜いて観られる映画ですが、考えされられる内容ばかりです。崔監督の作品をご覧になったことのない方はその良さを感じに、ご覧になったことのある方もその素晴らしさをこの映画で再認識してみて下さい。

古き良き小江戸川越の街並みを探索してみませんか?

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