「風のかたち」トークショー

「風のかたち」トークショー1月23日(土)、この日より川越スカラ座で上映が始まった『風のかたち』の伊勢真一監督と映画に登場する聖路加病院副院長細谷亮太医師のトークショーが開催されました。

トークショー前の上映には200人ほどの来場で簡易椅子も間に合わず、立ち見の方も多数、チケットを買う窓口も混雑し、スカラ座前は上映が始まっても行列が途絶えませんでした。

映画上映終了後、伊勢監督も細谷医師も、立ち見の方を気遣ってか、立ったままでのトークショーとなりました。
伊勢監督(左)と細谷医師(右)『風のかたち』は細谷医師が中心となって1998年から開始した小児がん患者やその体験者たちのサマーキャンプを記録したドキュメンタリー映画です。キャンプでは、子どもたちが病気のことやそれによって経験し感じたことなどを、子どもたち自身の言葉で語り合います。また、子どもたちのその後なども記録されています。

1年に1本のその記録を、細谷医師が伊勢監督に依頼したのだそうですが、伊勢監督は「これは自分の仕事、と呼ばれたような気がした」といいます。そして毎年子どもたちに「出会っていくことの積み重ねが映画になった」と、「2年目までは聞けなかった病気のインタビューも一歩一歩子どもたちに近づきながら3年目からようやくできるようになった」のだそうです。カメラが子どもたちの気持ちを引き出し、子どもたちもカメラを通じて思いを聞いてほしいと思う、そんなふうにしながら700時間にも及ぶ記録が出来上がりました。

伊勢監督(左)と細谷医師(右)映画はそれを1時間45分に編集してありますが、細谷医師は「本当に大事なことがきちっと撮ってある」と言い、子どもたちの言葉にはその思いが凝縮されていると話されます。
子どもたちが語りたい何かを持っていて、言葉だけでなく沈黙も含め、子どもが伝えたい気持ちを伝えていく、子どもたちは映画が上映される限り(映画の中で)語り続けるし、それは「生きてください」「頑張るんだ」という私たちへの応援メッセージともなり得ます。

この映画は決して悲壮な映画ではありません。登場する子どもたちはみんな笑顔で明るく元気です。そんな子どもたちから、「生きること」「命の大切さ」を観る人それぞれに感じられると思います。

観客との質問タイム伊勢監督はこの映画を観て「他の人を思い、同時に自分のことを思う」はずと言い、細谷医師は「人間の命は長さではなく、3年、5年の命でもその濃さ」を、「一つの命として物語を持ってそこにいて、いろんな子どもたちがいろんな風に生きていて、その中での本当がある」ことを知ってほしいと言います。そして、映画の中では語り切れないということも含めて、観る人に受け止めてもらえたら、とおっしゃっていました。

取材する私自身、幼くしてがんで亡くなったいとこのことを思い出しました。凝縮されたその命は何を私に伝えたかったのだろうかと。当時同じく子どもだった私は、ただ悲しいと思うばかりで、いとこの病気の苦しみも生きることの楽しみも理解しようとする力がありませんでした。でも今この映画を観て、伊勢監督、細谷医師のお話を聞いて、映画に出てくる子どもたちの思いが亡くなったいとこの思いのように感じられてなりませんでした。

『風のかたち』子どもたちが伝えようとしている事柄が、詩や俳句と同じように、同じ感じでぶれずに皆さんを刺激する、と伊勢監督がおっしゃったように、きっと観るたびに、違ったことを感じ取れるはずです。また観る人により観る状況によりさまざまな形となって、彼らの思いが心の中に入って来ることと思います。
スカラ座での上映は2月5日(金)までです。子どもにも大人にも、どんな世代の方々にも観ていただきたい映画です。

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